知的財産裁判例 事件番号:平成25(ワ)28704の公開内容について

JASRAC(原告)に訴えられたファンキー末吉さんの裁判の判例が下記にUPされました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=85898

判例を読み解くというのは、法律の素人には非常に難しい作業ですが、支援者1号なりの考えを書かせて頂くと、以前JASRACがプレスリリースで発表したような「JASRACの大勝利」のようなニュアンスとは、大幅に違うように感じています。

http://www.jasrac.or.jp/release/16/03_3.html

まず冒頭主文の1と2以外の原告(JASRAC)の訴えは全て棄却されてます。

裁判費用も被告が全額支払うのではなく半々であるということは必ずしも「被告が全て悪い」ということではないと裁判所が判断したものであろうと想像出来ます。

何より、703万5519円もの損害賠償を訴えたJASRACに対して、裁判所は283万1270円という半分以下の金額で判決を下しました。

これはひとえにJASRACはライブハウスに対して不当に高額な請求、つまり「水増し請求」をしているということに他ありません。

過去の裁判や判決で日本各地の様々な営業形態の店舗は、JASRACの不当に高額な請求を呑むしかなく、裁判の費用を用立てる体力も無かったことから、JASRACに逆らったがために潰されてきましたが、Live Bar X.Y.Z.→Aではちゃんと出演者が製作した演奏曲目リストがありましたから、裁判所はJASRACの不当な水増し請求よりも、そのひとつひとつのデータを信用したということです。

これからJASRACと契約しようと考えているライブハウスは、RIS:演奏曲目入力システム(http://www.onnsa.jp/)を使ってJASRACの水増し請求に対抗しておくことを強くお勧めします。なぜなら、JASRACは利用許諾の必要ない「著作権消滅曲のみを演奏する店」や「JASRACに登録されていない自作曲のみ演奏する店」であっても、JASRAC管理楽曲の演奏無しにライブハウスの経営は不可能である。かのような強引な取立てと不当な請求をしてきたからです。

また判例には、「平成28年2月11日以降 に生ずべき損害賠償金又は不当利得金の支払を求める部分を却下する」と書いてありますが、これは、裁判が続く限りJASRACの要求する損害賠償請求が毎月毎月膨らんでいって雪だるま式に増えてゆくということがなくなるということであり、これは被告にとってはかなり有利な判決であると見受けられます。

また判例文を読んでゆくと、興味深いのは
「ある楽曲の演奏 時間が5分以上であったからといって,直ちに原告管理著作物を5分以上 利用したと認めることはできない(p55)」
という部分で、過去の裁判ではJASRACが「演奏時間が5分を超えているから2曲分だ」と過剰請求されて来た現状において「必ずしもそうではない」という結論を初めて裁判所が出したという画期的な判例であると言えると考えます。

その他いろいろな被告の主張を却下してますが、それはひとえに「店が演奏させている」「店が歌唱させている」という理論に基づいての話であり、店のHPでの発表(http://www.livebarxyz.com/)にも公表されているように、

当店としては、この判決がいまだ第一審の判断(通過点)に過ぎず、内容的にも根本的に不当なものであると考えており、引き続き主張が認められるよう活動していく予定です。

ということで、この点を次のステージでも争ってゆくものだと想像出来ます。

さて私たち傍観者(応援者)にとってちょっと残念なことは、「集めた著作権料を正しく分配しろ」とか「包括契約のブラックボックスを白日のもとに曝けだせ!!」というJASRACが許諾料をそもそも徴収する根拠となっている原因については、この裁判では一切触れられていないことです。

このことは、この裁判が起こる根本の問題ではあるものの、おそらくJASRACはファンキー末吉さんにこの攻撃をされないように別の部分(著作権料を支払え)のみの訴えを起こしているもので、ファンキー末吉さんとその弁護士の方々はまず今はその火の粉を振り払う段階なのではないかと想像します。

その段階においての被告側の主張が、「ライブハウスは店が演奏者を管理支配していない」というところなのではないでしょうか。

もともとケントスとかビートルズ酒場とか、いわゆる「箱バン」と呼ばれる店では「店が演奏させている」というのは当てはまる考え方かも知れませんが、昔から著作権裁判において根拠とされて来たこの古い考え方は、全く現状の「ライブハウス」というものには当てはまらない「時代遅れ」な考え方であるということです。

まずこの部分を戦って、火の粉が完全に振り払えた段階で次の戦い、つまりJASRACの不透明な徴収と分配という核心部分を追求してゆくという、非常に長い戦いになることが予想されます。

しかしJASRACの闇を突く戦いはファンキー末吉さんだけの戦いではなく、著作権料を何らかの形で支払っている私たち全国民がJASRACに対して追求してゆく大きな「社会問題」です

今後もファンキー末吉支援者の会は、ファンキー末吉さんの「守りの裁判」を応援するだけではなく、不透明な許諾料と分配の根拠を示さないJASRACに、一方的に手足を縛られて動けないファンキー末吉さんの代わりにJASRACの不正を叩く「攻めの方法」を常に模索してゆくつもりです。

今後もファンキー末吉さんの裁判そしてそれを援護し、日本の国民が支払った音楽著作権料利用許諾料金が、誰の手にどう渡っているのか? しっかりと晒す活動にご支援のほどよろしくお願い致します

今後起こりうる様々な戦いをも視野に入れて、あらゆる意味でファンキー末吉さんを応援してゆきたいと思っております。

変わらぬご支援をお願い致します。

知的財産裁判例

事件番号:平成25(ワ)28704
事件名:著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日:平成28年3月25日
裁判所名:東京地方裁判所